
メールサーバー名に独自ドメイン名を使えるのか検証してみた
メールサーバー名に独自ドメインを使うなら、DNS逆引きができるサーバーを使いましょう。
そうでないサーバーでも、DNSにCNAMEレコードを追加すれば一応は使えます。
しかしSSL暗号化されたメールは送受信できないので、実質お勧めはできない事になります。
メールサーバー名に独自ドメインを使う
レンタルサーバーに独自ドメインを設定すると、ドメインメールが利用できますよね。
その時に必要になるのが以下の情報です。
メールアカウント設定情報
・ユーザー名(メールアドレス)
・受信サーバー名
・送信サーバー名
・パスワード
この中で受信サーバー名や送信サーバー名は、契約サーバー側の用意するホスト名やメールサーバー名が入ります。
受信サーバーの名前例
エックスサーバーなら…○○〇.xserver.jp
ロリポップなら…pop.lolipop.jp
さくらインターネット…〇○○.sakura.ne.jp
この様にメールサーバー名には、独自ドメイン名ではなく「契約サーバーのドメイン名」が入る仕様です。
クライアントにドメインメールを発行する場合
自分で独自ドメインでメールを使う場合は、メールサーバー名が何であっても別に問題は無いでしょう。
しかしクライアントワークとしてWEBサイトやメールを開設する場合は、ちょっと気になります。
特にドメイン・サーバーの維持費用を全て自分が代行しており、サーバー先を明かしていない場合ですね。
メールサーバー名からサーバー先がばれる
この時、設定情報のメールサーバー名から契約しているレンタルサーバー名がばれてしまう事があります。
受信サーバー名…pop.lolipop.jp
送信サーバー名…smtp.lolipop.jp
人によっては「lolipopって何?」と思ったり、「ロリポップサーバーだ!」と分かったりするのですね。
何も知らないクライアントならスルーされるでしょうが、詳しい人だった場合は厄介ですよね。
メールサーバー名に独自ドメイン名を使いたい
そんな時思うのが、メールサーバー名に独自ドメイン名が使えないかという事です。
例えば本サイトのlpeg.infoドメインで言いますと
受信サーバー名:pop.lpeg.info
送信サーバー名:smpt.lpeg.info
この様なメールサーバー名を使う事ができれば、実際の契約サーバーのドメイン名を隠す事ができますよね。
本記事ではよく使われているレンタルサーバー先で、実際にそれが可能なのかどうかを検証してみました。
元々可能なサーバー先はある
独自ドメイン名がそのままメールサーバー名に使われるサーバーは元々あります。
ただそういったレンタルサーバー先は、今は限られています。
ポイントは、独自ドメインに対しIPアドレスが直接付与される様なサーバーである事です。
IPアドレスが付与されるレンタルサーバー例
・Webarena
・OCNホスティング etc
この様なレンタルサーバーは、サーバー契約時に独自ドメイン名を1つ決定します。
独自ドメインとIPアドレスとを紐づけた状態でサーバーが開設されるので、ホスト名やメールサーバー名にドメイン名が入ります。
ですので契約さえすれば、自動的に独自ドメイン名の付いた受信サーバー名・送信サーバー名となるのです。
ただしこういったレンタルサーバーは費用が比較的高く、どちらかと言うと人気のサーバーではありません。
今主流のサーバーはドメインにIPアドレスが紐づかない
上記のサーバーはDNSの逆引きができるサーバーでもありますが、今は逆引きができないサーバーの方が主流です。
今の主流サーバーのIPアドレスはホスト名に紐づき、直接独自ドメインに紐づきません。
その代わりに一つの契約で複数サイトを運営でき、料金がリーズナブルであるという特徴があります。
DNSレコード(CNAME)の追加が必要
ドメインとIPアドレスが直接紐づかないサーバーで今回の目的を実現するには、事前設定が必要になります。
それが、DNSへの「CNAMEレコード」追加作業です。
DNSレコードの操作と聞くだけで気が引けるかも知れませんが、操作は簡単なので読み進めて欲しいです。
DNSレコードにCNAMEを追加する
まずは対象のドメインを管理しているサービス先で、DNSレコードの追加ができるかどうかを確認しましょう。
例えば以下の管理サービスにはDNSの編集機能があります(一例です)。
主なDNSサービス先
・ムームードメイン
・お名前.com
・エックスサーバー
・名付けてネット
・さくらのドメイン
・ドメインキング
・バリュードメイン
各ドメイン管理会社によってDNSレコードの操作手順は違いますが、追加するレコードは大体同じです。
CNAMEレコード追加例
ホスト名 | タイプ | 内容 |
---|---|---|
pop | CNAME | ホスト名かメールサーバー名 |
smtp | CNAME | ホスト名かメールサーバー名 |
imap | CNAME | ホスト名かメールサーバー名 |
ホスト名(サブドメイン)欄に「pop」や「smtp」を入れ、それぞれ「CNAME」を選択します。
その上で内容項目欄に、本来のメールサーバー名(ホスト名)を入力する訳です。
ここでのメールサーバー名・ホスト名とは、メール設定情報に通常記載されている受信・送信サーバーの名前です。
このサーバー名を使わずに別名で利用できる様にするのが、CNAMEの役割です。
本来の受信サーバーの別名として「pop.ドメイン名」を登録
本来の送信サーバーの別名として「smtp.ドメイン名」を登録
pop.ドメインなどの別名をDNSに登録する事で、本来のサーバー名を使わずにいこうとしている訳です。
CNAMEレコードだけで済まない場合もある
DNSレコード「CNAME」を登録する際に、注意が必要です。
ドメインのDNS状態によっては、CNAMEを登録するだけで良い場合もあります。
しかし時にはAレコードやNS・MXレコードも同時に設定しなければならないケースもあります。
例えばドメイン管理会社とサーバー会社が、別々の場合などです。
この辺りはそれぞれのドメイン会社のDNSレコードの編集に関する記事を参照下さい。
メールソフト(Outlook2019)で検証
今回は検証にOutlook2019のメールソフトを使っています。
今回のアカウント追加時の変更点
登録するメールサーバー名は、いずれも今回CNAMEに入れた別名で入力します。
受信サーバー名…pop.lpeg.info(pop.ドメイン名)
送信サーバー名…smtp.lpeg.info(smtp.ドメイン名)
それ以外のユーザー名やパスワードは通常通りです。
SSLなしとSSLありとで、ドメインメールが送受信できるのかどうか検証をしてみます。
メーラーによって違う結果が出る可能性もありますが、そこは割愛します。
ロリポップレンタルサーバーの場合
ロリポップの場合は大体、ムームードメインでドメイン管理していると思います。
ムームードメインには「ムームーDNS」というDNSサービスがありますので、ここでCNAMEを追加する事になります。
CNAMEレコードのみ追加
ネームサーバー先が「ロリポップ」の場合、WEBとメールの読込先は「ロリポップ」に指定されています。
ですのでAレコードやMXレコードの追加の必要はなく、CNAMEレコードだけを追加するだけで済みます。
CNAME追加
上記の様にCNAMEを追加してみました。
結果
SSLなしの設定なら問題なく送受信ができました。CNAMEが効いている様です。
SSLありの送受信は問題あり
しかしこれはSSL無しの場合であり、SSLの設定を掛けると問題が起きます。
・受信…このサーバーでは暗号化された接続が必要のチェックをON
・送信…暗号化方法を「SSL/TLS」を選択
メールは上記の設定を掛けて、SSL暗号化するように推奨されています。
設定後も送受信はできるのですが、「証明書のプリンシパル名が間違っている」というガイダンスが定期的に表示されます。
これに毎回「OK」を押す必要があるので、クライアントにはお勧めできないと言えますね。
さくらインターネットの場合
さくらインターネットは「さくらのドメイン」というドメイン管理サービスがあります。
しかし今回さくらのドメインの管理下にあるものが試せませんでした。
さくらインターネットサーバーを使っている「お名前.com」管理下のドメインがあったため、そちらのDNSサーバーを利用しました。
お名前.comのDNSサーバーを利用
お名前.comとさくらインターネットは全く別会社ですので、DNSサーバーを利用する場合CNAME追加だけではすみません。
・Aレコード
・NSレコード
・MXレコード
これらを設定した上でCNAMEの別名を追加する必要があります。
DNSレコード追加
上記の様にCNAMEを含むレコード一式を追加してみました。
結果
これも「SSLなし」なら送受信できる様になります。
しかしSSLありの設定にすると、やはり「証明書のプリンシパル名が間違っている」というガイダンスが出る様になります。
修復を押すとサーバー名が変わる
すぐに重大な欠陥を発見しました。
Outlookの場合アカウント情報を修正するには、「修復」ボタンを押す必要があります。
この時自動修復の影響で、設定したドメイン名のサーバー名が「sakura.ne.jp」のサーバー名に変わってしまうのです。
sakura.ne.jpに変わった状態
しかもこれをそのままにしていると「設定エラー」になるという残念な結果に。
つまりもう一度独自ドメインのメールサーバー名を入れ直ししなければなりません。
単に修復を押すだけでもエラーになる
さらにこれはSSLなしの状態でも、一度「修復」を押してしまうと同じ症状が起きてしまいます。
これは実質、送受信はできないと判断すべきでしょう。
他のメールは「修復」を押しても、設定した独自ドメインのメールサーバー名が変わる事はありませんでした。
CNAMEを追加した事が原因と思われますが、他のメールソフトでどうなるのかは調査が必要です。
エックスサーバーの場合
エックスサーバーは、サーバーパネル内にドメインDNSを設定できる欄があります。
ドメイン管理のX-domainサービスの方では無く、サーバーパネルから直接DNS操作ができるので大変便利です。
対象ドメインのドメインDNSレコードの追加ページを開きます。
DNSレコードのみ追記
エックスサーバーのサーバーパネル上では、AレコードやMXレコードは設定された状態になっています。
ですのでCNAMEを追加するだけでOKです。
上記の様にCNAMEを追加してみました。
結果
ロリポップ同様にSSLなしの設定なら、問題なく送受信できました。
しかしSSLの設定だと送受信はできても、やはり「証明書のプリンシパル名が間違っている」というガイダンスです。
毎回「OK」を押す必要がある訳ですね。
※エックスサーバーのFAQに、独自ドメインをメールサーバー名に使う事はできるが、SSL暗号化は使えないと明記されていました。
Hetemlレンタルサーバーの場合
Hetemlはドメイン管理機能はありませんが、ロリポップの上位互換サーバーの位置づけです。
ですのでムームードメインで管理しているのであれば、既にWEB先やメール先はHetemlに指定されています。
ですので先ほど同様に、CNAMEを追記するだけで済みます。
上記の様にCNAMEを追加してみました。
結果
Hetemlの場合はSSL暗号化無しであっても設定が完了せず、送受信ができません。
正常にアカウント登録できない以上、致し方ありませんね。
HetemlもFAQページに「メールサーバー名に独自ドメイン名は使えない」と明記されていますしね。
まとめ
結論として今主流のレンタルサーバーの場合、SSL無しならメールアカウントの送受信は可能です。
全てのサーバーを調べた訳ではありませんが、一応独自ドメインのメールサーバー名を使う事はできていました。
SSLありの送受信はどれもできない
ただSSLありだと、どれも「証明書のガイダンス」が出るので実質使えないと言えるでしょう。
しかもさくらインターネットの場合、SSLなしのメールでも完ぺきではありません。
アカウント修復を押すとメールサーバー名が変わってしまう事もわかりました。
SSLなしのメールの送受信はやはりお勧めできませんから、今回調べたサーバーでは独自ドメインをメールサーバー名に使うのは難しいと言えます。