
フリーランスの国民年金基金について
国民年金基金は国民年金にプラスして加入できる年金です。
老後資金としても優秀ですし掛け金は全て所得控除ができるので、老後の資産を形成しつつ節税ができます。
基本的には終身タイプですが、掛け金は年金のタイプによって様々な種類があるので、詳しくは国民年金基金のWEBサイトでシミュレーションしてみましょう。
老後の生活費はどのくらいかかる?
個人事業主やフリーランスの人にとって、何らかの形で老後の資金対策をおこなう事は必須の条件になっていますよね。
常に経済的にもリスクを抱えていますし、国からも公的補償にも乏しい環境にいる訳です。
ですので老後の生活資金を形成していくためには、今後ご自身でさらなる対策を取る必要があります。
投資や個人年金などが資産形成の主な手段としてよく耳にされる様になったのはそのためです。
高齢夫婦の月の支出は27万
総務省統計局が発表する「家計調査報告」によると、無職の高齢夫婦の1ヶ月の支出はおおよそ27万円だそうです。
この支出金額には何と住居費用は含まれていないのです。もしマンションやアパートなどの賃貸物件に住んでいる世帯は、家賃を上乗せして考えなければなりません。
以前メディアで老後に2,000万円の貯蓄が必要という噂が広まりましたが、無理もない話だと思います。
国民年金基金とは?
国民年金基金とは、国民年金とは別に加入できる公的な年金制度です。公的制度なので安心ですね。
会社員(厚生年金の被保険者)の場合、国民年金とあわせて会社員として納付していた厚生年金保険料に基づいた厚生年金が支給されます。
それに対し自営業やフリーランスの方にはこういった年金は支給されませんので、その分公的保証がありませんよね。
そこで国民年金とセットで自営業者への老後の生活保障の役割を担うべく誕生したのが国民年金基金と呼ばれるものです。
国民年金基金の加入条件
国民年金基金に加入できるのは、日本国内に在住し20歳以上60歳未満の自営業者とその家族・学生などです。
つまり国民年金に加入している「第1号被保険者」に該当する人が対象になります。
厚生年金に加入している人「第2号被保険者」やその配偶者「第3号被保険者」は加入する事ができません。
国民年金基金に加入できない方
下記の人は国民年金基金に加入する事ができません。
・厚生年金保険や共済組合に加入している会社員
・厚生年金保険や共済組合に加入している方の被扶養配偶者
・国民年金保険料の支払いを免除されている方
・農業者年金の被保険者の方
元々保険料を免除されている人は国民年金基金には加入できないという事ですね。
あくまで国民年金を納めている人がプラスで国民年金基金に加入する訳です。ですので国民年金への加入条件が満たされていないと加入は出来ません。
メリット
国民年金基金は資産を形成しながら節税ができる
国民年金基金は、その全ての掛け金を所得控除(社会保険料として控除)する事ができます。
掛け金は老後の資金・資産として貯蓄・構築され、かつ節税のために所得控除ができる事が最大のメリットと言えます。
所得控除とは
所得控除とは、所得から所定の金額を差し引くことで税率反映後の納付額を安くする事を言います。
所得控除でこんなに違う:計算例
仮に国民年金基金の満額6万8,000円を12ヶ月分支払った場合、その年間の保険料は合計81万6,000円になります。
所得が500万円の場合
国民年金基金以外の所得控除が無かった場合で計算
・所得5,000,000円×税率20%=所得税1,000,000円
(5,000,000円-所得控除816,000)×税率20%=所得税836,800円
・163,200円分安くなる
上記の様に税率20%計算の場合、納める所得税が16万3,200円だけ安くなる事になります。
本来よりも16万3,200円節税したことになるのです。
住民税との合算でさらなる節税額に
さらに住民税でも同じような計算をすると、さらにプラス8万1,600円を節税する事が可能になります。
逆に考えるとこの国民年金基金の約81万円を払わない場合、資産構築ができないどころか合計24万円も余計に税金を納めてしまっていると言えますね。
これは非常にもったいない話です。
所得税は所得が高いほど税率が上がるので、所得が上がれば上がるほど節税効果が高まります。
掛け金も自在に変更できるので、自分の環境に応じたレベルで年金資産を作りながら節税ができるのです。
国民年金基金は終身型保険(一口目)
国民年金基金は終身型に相当します。これも特徴的なメリットの一つです。
それに対しiDeco(確定拠出年金)を含むその他の私的年金では、終身型で年金を受け取ることができません。
終身型と確定型
・終身型は生涯にわたり年金を受け取ることができる。
・確定型は支給期間を5年、10年、15年から選択できる。
年金としても優秀
例えば月額3万円の年金を死ぬまでもらい続けようとする場合、40歳から加入した場合の月額の掛け金はおおよそ17,145円となっています。
これってかなりの待遇ではないでしょうか。民間の個人年金と比べてもかなり良い条件だと思います。
本人が受給中に亡くなった場合
それにもし当人が亡くなってしまっても15年支払保証がありますので、その間ご遺族は月額3万円を受け取り続ける事ができます
※掛け金A型の場合のみ適用、詳しくは国民年金基金の掛け金をご覧ください
国民年金基金は任意
国民年金基金は任意です。ですのでどうしても経済状況が無理だという方は入る必要はありません。
入る場合も少ない掛け金から始めることができますし、加入後の状況に応じて月々の掛金の変更ができます。
いろいろな年金のタイプがあり、現在おかれている状況や将来の見通しにあわせて選択する事ができるのです。
どうしても年金を支払えない場合には2年間支払いを猶予することができます。その場合あとから未納分を支払えば年金は満額受給する事ができます。
デメリット
年金としても優秀で節税効果の高い国民年金基金ですが、デメリットもあります。
国民年金基金は自由に使えない
あくまで国民年金基金は年金であり、預貯金ではないという事です。
一旦掛け金を払ってしまうと年金としてもらうまでお金は帰ってこないという事ですね。
つまり自在に引き出しをしたりする事はできないのです。
インフレ・デフレには未対応
さらには物価の上がり下がり(インフレやデフレ)には対応しません。
老後に受け取る金額は確定しているため、仮に年金を受給するまでに物価が上昇してしまった(インフレ)場合は、お金の価値自体は下がります。
つまり実質的な年金額が下がってしまうという事になりますね。
※逆に仮にデフレで物価が下落していれば、実質の年金額は上がることになります。
国民年金基金の掛け金
国民年金基金の掛け金の仕組みは少し複雑です。
掛け金は口数単位
まず掛け金は口数制です。1口・2口と加入する事ができます。
・1口目は強制的に終身年金の形態です。
・2口目からは終身年金か確定年金かを選択することができます。
終身年金タイプの仕組み
終身年金タイプにはA型とB型の2種類があります。
2つの違いは、A型のみ年金支給期間に15年分の保証が付いていることです。
万が一受給開始から数年で亡くなった場合、A型には15年間分の受給額が保証されています。ですので死後も15年間は遺族が受け取ることができます。
しかしB型の場合その保証は無く、受給額は支払った掛け金を下回ってしまいます。
この特典がある分だけA型の掛け金はB型より若干高額になっているのですね。
A型とB型の違い
種類 | A型 | B型 |
---|---|---|
掛け金 | 高い | A型より低い |
受給者死亡時の保証 | 15年保証 | 支払った掛け金を下回る |
確定年金タイプの仕組み
2口目以降は、1口目の終身年金にさらに掛け金を上乗せするか、I~Ⅴ型まで用意された各種の確定年金にするか選択可能です。
・受給開始年齢(60歳 or 65歳)
・保証期間(5年・10年・15年)
以上の組み合わせにより確定年金タイプのI型からⅤ型まで分かれています。
掛け金について
掛け金は加入時の年齢と性別・上記の年金タイプ(A型、B型、I~Ⅴ型)によって異なります。
このあたりは年金シミュレーションで簡単に計算できるため、一度確認してみましょう。
国民年金基金連合会HPはこちら
掛け金には上限あり
また掛け金はどのタイプに何口掛けても月額6万8,000円が掛け金の上限となります。
もし確定拠出年金などに別途加入している場合は、その掛け金との合計が月額6万8,000円以下である必要があります。
シミュレーション例
もし20歳の男性が終身年金A型に一口加入したとすると毎月の掛け金は7,200円程度となり、総払込額は350万円程度になります。
それに対して65歳で受け取る年金は、国民年金受給額に毎月20,000円が上乗せされることになり、そこから長生きすれば長生きするほどお得になるという訳です。
仮に同じ条件で35歳からの加入ですと毎月の掛け金は約1万円となりますが、65歳で受け取る額は1万5,000円程度となります。
国民年金基金を検討するなら早めに加入しておけばその分有利ですね。
加入が難しいなら付加年金保険もある
いくら国民年金基金に節税効果があると言っても、開業したてで資金に余裕がないうちは加入する事をためらう人もいるでしょう。
利益が出ていない内はそんなに税金を納める必要もないですしね。
けれど老後の事はまた別の事で、やはり気になりますよね。
そんな時は「付加保険料」の支払いを検討してみてはいかがでしょうか。
付加保険料とは
付加保険料とは毎月支払う国民年金に月額400円を足して支払う保険料の事です。
月々の金額に400円を足すだけで大きな保障を受けられることがこの付加保険料の特長です。
事業を始めたばかりで資金にゆとりがない人にはおすすめです。
付加保険料を支払うとどうなるか
付加年金は支払われた月数に応じて老齢年金が増額される仕組みになっています。支払った月数×200円分だけ、年間の年金支払額が増額されます。
例えばあなたが今後30年間(360か月)にわたって、この付加保険料を月々払う国民年金料にプラスして支払ったとしましょう。
付加保険料の計算例
その場合毎月追加で支払った保険料の総額は360月×400円=144,000円になります。
これに対し増額される1年の年金は360月×200円=72,000円になります。
つまり受給開始からずっと年間72,000円ずつ、通常より多く年金を受給することができる事になりますね。
最初の2年で元が取れる
支払い増額分は30年で144,000円ですから、最初の2年間分受給した段階で増額して支払った保険料の元がとれる計算になり、後は全てプラスです。
ちなみに残念ながら、この付加保険料の制度を国民年金基金と併用する事はできません。
国民年金基金以外の年金対策もあります。
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