所得控除の活用術【扶養控除・社会保険料控除・雑損控除】編

所得控除の活用術【扶養控除・社会保険料控除・雑損控除】編

所得控除の活用術【扶養控除・社会保険料控除・雑損控除】編

あまり知られていない所得控除の活用術

前回所得控除の一覧の記事で、所得を控除できる様々な控除項目がある事をご紹介しました。

その中には言葉としては知られていても、上手く活用しきれてなかったり比較的認識がされていない仕組みが存在します。

ここではその中で特に目を配るべき項目の控除内容と活用方法をご紹介します。

扶養控除について

扶養控除について

所得控除の中でまず着目してもらいたいのが「扶養控除」です。この扶養控除には世間一般的に浸透している認識と実際の仕組みにズレがあるようです。

扶養の範囲

扶養控除に入れる事ができる家族・親族の範囲は実は相当広い事を知っていましたか?

税法ではその扶養範囲は「6親等以内の血族、もしくは3親等以内の姻族」と決められています。

6親等以内の血族はどこまで?

6親等以内の血族という事は自分の親族ならば、いとこの子供や祖父母の兄弟が扶養に入れられる事を理論上意味しています。

祖父母の兄弟というと会った事もないという人がいるでしょうが、そのような人も条件を満たせば扶養に入れる事ができるようになっています。

3親等内の姻族はどこまで?

そして3親等内の姻族と言えば、奥さんの叔父や叔母までが含まれますので扶養の範囲に入れる事が可能なのです。

これってかなりその範囲が広いと思いませんか?条件次第ですがその範囲を拡大する事ができる点はチェックですよね。

条件内であれば誰でも扶養に入る事が可能

扶養控除は一般的に「扶養している家族」がいれば適用されるのですが、ここでの「扶養している」という条件に明確な定義は存在していません。

一般的にその対象者と本人が生計を共にしていれば、それは「扶養をしている」という事になるでしょう。

実際に生活の面倒を見ている事が条件となる訳ですね。そしてその事実さえあれば、それ以外に明確な数値条件などは存在していません。

扶養対象者には年齢も関係がない

例えば42歳の独身女性が実家暮らししていて実家から会社に勤めているとしましょう。

実家で同居する両親がいずれも定年で退職をしている場合、その独身女性は両親を扶養に入れる事ができます。

大黒柱として家計を支えているのはこの42歳独身女性ですので、扶養に入れる事に何ら問題はありません。

一度外れた扶養にまた入る

それから一度サラリーマンとして働き始めた30歳の独身男性が、その後仕事を退職して実家に帰ってきたとしましょう。

一度就職をした段階で両親の扶養からは一旦外れています。

でもその後会社を辞めており、そのまま次の就職先が決まっていない・かつ親がまだ働いているのであれば、親はその男性(息子)を扶養に入れる事ができるのですね。

「扶養から外れる・扶養に入る」は繰り返しても構いません。そのたびに扶養控除の対象になるという訳です。

このように細かい条件が設けられていないのが扶養控除の特色です。

ただし扶養に入れる事ができるのは「一人のみ」です。2人兄弟のそれぞれから親を扶養するなどの重複は認められません。

離れて暮らす親を扶養に入れる

扶養控除においてさらに認識不足と思われるのは「同居している家族しか扶養に入れない」という誤解です。

実はこれ違うんですね。

離れて暮らしていても一定の条件を満たしていれば扶養に入れる事ができるのです。

生計を共にしていればOK

きちんと「生計を共にしている」のであれば親が離れていても問題はありません。

「面倒を見ている」その事実が揺るがないのであれば、離れていても扶養対象者になります。対象者との距離は関係が無いのです。

ですので別居している親を扶養に入れている人は実は結構います。何ら咎められることはありません。

年金をもらっている親も扶養に入れれる

親が他に誰も扶養に入っていない状態であり、自身が面倒を見なければならない立場にいれば、その親に年金収入があっても扶養に入れる事ができると言えます。

年金収入は下記の条件内です。

・65歳以上で公的年金収入が年間158万円以下
・65歳未満で公的年金収入が年間108万円以下

「遺族年金」はもらっている事にならない

また両親のうちどちらかが亡くなった場合に、遺族年金を受け取る事ができますが、この遺族年金は「所得」には含まれません。

ですのでいくら遺族年金が支払われていても、何ももらっていない事と同じ扱いです。

であればその残された親の年金収入次第で、遺族年金をもらっていても扶養に入れれる可能性は大いにあると言えるでしょう。

扶養控除の対象年齢と金額

・扶養家族一人あたり…38万円
・19歳以上23歳未満の親族…63万円
・70歳以上の親族…48万円
・70歳以上の同居老親…58万円

社会保険料控除について

社会保険料控除について

個人事業主・フリーランスが1年間に支払った国民健康保険・国民年金などの社会保険料については、その全額が控除の対象にできます。

これが「社会保険料控除」です。これについてもあまり知られてない事があります。

社会保険料控除は自分の社会保険料だけでなく「家族に掛けている社会保険料も控除の対象」となる場合があるのです。

家族の分の支払いをしている場合

つまり親や子供の社会保険料を自分が払っている場合は、そのぶん社会保険料控除を受ける事ができるのですね。

例えば以下のようなケース

・年金で暮らす両親の社会保険料を自分が立て替えている
・フリーターの子供の国民年金を自分が立て替えている

以上のケースの場合は立て替えている分も含めて社会保険料控除を受ける事ができます。

個人事業主・フリーランスであれば、送られてくる家族の社会保険料控除証明書を自分の確定申告書に添付すれば良い事になります。

未納の社会保険料を活用した節税術

社会保険料は過去に未納分があっても、それを払えば支払った年に控除を受ける事ができます。

ですのでフリーランスであれば、利益が出た時に未納にしていた社会保険料を支払えばよいと思います。

そうすればその年多くの社会保険料控除を受ける事ができます。

利益が出た年だけ未納分を支払って控除額を増やす事ができるので、うまく使えば節税になりますよね。

雑損控除について

雑損控除について

所得控除の中で一番忘れられがちなのが「雑損控除」です。

これは災害・盗難・横領などに遭い、あなたが所有する「生活用資産の損失」が生じた場合に受けることの出来る控除ですね。

雑損控除の計算方法

①損失額-所得金額の10分の1
②災害関連支出-50,000円

上記のうち金額が大きくなる方が選択されます。

盗難の場合

仮に盗難などを受けた場合は災害関連支出にはならないので、必然と1番を選ぶ事になりますね。

所得が300万円の人が50万円の盗難にあった場合

・50万円-30万円(所得の10分の1)=20万円

これが雑損控除として控除する事ができるという訳ですね。

自然災害の場合

自然災害で損失を受けた場合に1番と2番とを比べて金額が多い方を選択する事になります。

所得が300万円の人が100万円の災害関連支出となった場合

①だと、100万円-30万(所得の10分の1)=70万円
②だと、100万円-5万円=95万円

この場合金額が大きくなるのは2番の方なので、2番を選択して95万円が所得から控除される事になりますね。

最近は特に雨や台風などの自然災害が多いため、この災害関連支出が大きくなる傾向になります。

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