
モンティホール問題の条件付確率についてわかりやすく説明してみた
モンティホール問題は勘違いが起きやすい条件付き確率の代表例です。
確率は半々ではなく、箱をチェンジした方がチェンジしない場合よりも当たる確率が2倍高くなります。
どんなに母体数が多くても、ハズレが除外される事で当たりとハズレの箱の割合が1対1になるところが重要です。
モンティホール問題:条件付確率
モンティホール問題とは、アメリカの名司会者モンティ・ホールが、テレビ番組「Let's make a deal」で紹介したゲームで起きたお話です。
「どちらを選ぶか」と条件のついた確率選択で、多くの視聴者が騙されました。
本記事はちょっと趣向を変えて、条件付きの確率の考え方の代表例であるこのモンティホール問題についてご紹介します。
このお話は条件付確率のお話
有名なこのお話の焦点は、「条件付確率」にあります。
条件付確率とは本来の確率が特定条件により変動する事なのですが、小難しい話を述べるつもりはありません。
ただ「何故その様になるのか」については、大体把握してもらえるのではないでしょうか。
司会者モンティホールが出した問題
TV番組でのくじ引き形式プレゼント
観客の目の前にA・B・Cの3つの箱が並んでいます。
1つだけ当たりである「宝石」が入っており、残りの2つの箱には何も入っていません。
つまり当たりの箱を選べれば中の宝石が手に入る訳ですね。
観客と司会のチョイス
この中から1つの箱を観客の一人に宣言(選択)してもらいます。
次に司会のモンティ(以下:司会者)は、観客が選ばなかった2つのうち「何も入っていない箱」を1つ開けて、除外します。
これで目の前には、観客が選んだ箱とそうでない箱の2つが並ぶ事になりますね。
最終的に観客にこのどちらかの二択を迫って、盛り上がっていく流れです。
3つの箱の状態
観客と司会のチョイス後、3つの箱は以下の様になります。
・観客が最初に選んだ箱
・司会者が選んで除外したハズレの箱(その場から消去)
・残った箱
ここで司会者は観客に、自分が選択した箱と残っている箱のどちらかを選びなおして良いと提案します。
この司会者の投げかけにより、観客はもう一度だけ二択の機会を与えられます。
ここでの選択肢は以下の2つ
最終的には二択ですから、どちらかしかありません。
・最初に選択した箱から変えない
・残った箱に切り替える
この時あなただったらどうするでしょう。どちらを選んだほうが宝石が当たると思いますか?
実はこの時の確率の考え方が、あとあと長く議論がされる問題となりました。
この最終的な二択で、間違った選択をする人が多かったからです。
宝石を取れる確率は同じであると考える
最終の二択の確率は「2分の1」
このゲームの最後は「最初に選択した箱」と、司会者に「残された箱」の二択になります。
このどちらかに宝石が入っているのだから、その確率は二分の一です。
50%50%なのであれば、どちらを選んでも宝石を取れる確率は同じであると思うでしょう。
精神的なプレッシャーも
仮に残された箱の方にチェンジして、もしそれが「外れ」だった場合、その時のショックはかなりのものでしょう。
選択を変えなければよかったと後悔しますよね。
そういった精神的なダメージを負いたくないと思う人も多いはずです。
箱をチェンジした方が宝石を当てる確率が高くなる
ではここで明言しておきます。
今回はここで箱をチェンジした方が、宝石入りの箱を選べる確率が確実に高いのです。
これは数学的・確率的に証明されていると言うのですから、不思議ですよね。
2つの内一つを選ぶのだから確率は半々のはずなのに、ではなぜ箱をチェンジした方が宝石をGETしやすいのでしょうか。
条件付で確率が上がるシチュエーション
ではこの3つの箱のうち一つが宝石が入っている状態をおさらいしてみましょう。
あなたに箱を選んでもらいます。もちろん宝石が入る箱は完全にランダムです。
この時、3つの箱から宝石入りの箱を選ぶ確率は「3分の1」であり、外れの箱を選択する確率は3分の2となります。
ここまでは当然の確率ですね。
条件が付与される事で確率が変動する
次にあなたが選択した箱以外から、司会者がハズレの箱を一つ除外します。
中身が空っぽなのを確認した上ででしたね。
これで箱は2つとなり、そのどちらかが「宝石入り」となるのですが、これが「条件付与による確率変動」にあたります。
ここであなたは箱を選び直す事ができる訳です。
箱をチェンジしない場合:
本来、最初の3つの箱のうち宝石が入った箱を選ぶ確率は「3分の1」です。
もし最初からあなたに選び直しをするつもりが無いのなら、箱を1つ除外されてもきっと気にならないはずです。
最初から「これだっ!」と決めている訳ですからね。
これは、3つの箱から宝石入りの1つの箱を当てる単純な確率勝負に挑んでいる事になります。
司会者に箱を除外されるアクションに惑わされますが、最初に選択した箱を変えないのであれば「除外されなかった事と同じ」で、条件付確率が発生しない事になります。
変えない場合の確率
最初から選択した箱を変えない=宝石入りの箱を取る確率は「3分の1」
通常はこれが普通の確率です。
ところが今回はこれに加えて、司会者による箱の除外というアクションが入ります。
この除外された箱には宝石は入っていない事も保証されている訳です。
この条件が付与される事で、実は確率が各段に上がるのです。
箱をチェンジする場合:
ではここで選択した箱をチェンジした場合はどうなるのでしょうか。
今回は3つの箱しかないので、全てのパターンを検証してみます。
実際には選択する箱の数が100個であろうと1000個であろうと、同じ確率計算になります。
宝石入りの箱が「A」の場合
もし「A」に宝石が入っていたとして、あなたが最初の選択で「A」を選んだとしましょう。
であれば司会者は、BかCの箱を除外する事になりますよね(どちらにするかは司会者の好みです)。
司会者により除外されるパターン
・Bが除外されて、AとCだけ残る
or
・Cが除外されて、AとBだけ残る
そうすると残るのはいずれも、宝石入りのAと宝石が入っていない箱(BかC)です。
今回あなたは必ず箱を選びなおす事が前提ですから、宝石の入った箱Aから別の箱にしなければなりません。
・B or Cへ変更する(ハズレ)
つまりこのケースだと確実に失敗する訳ですね。
宝石入りの箱が「B」の場合
もし「B」に宝石が入っていたとして、あなたが最初の選択で「A」を選んだとしましょう。
司会者により除外されるパターン
この場合残りはBとCの箱になりますが、宝石入りのBは除外できません。
ですので司会者は100%確実に、Cを除外する事になります。
Cが除外されて、AとBだけ残る
そうすると残るのは、自分が選択したAの箱と宝石入りのBの箱です。
今回あなたは必ず箱を選びなおす事が前提ですから、Bの箱に変えて宝石をGETできる訳ですね。
・Bへ変更する(アタリ)
このケースなら宝石をもらう事ができます。
宝石入りの箱が「C」の場合
もし「C」に宝石が入っていたとして、あなたが最初の選択で「A」を選んだとしましょう。
司会者により除外されるパターン
この場合残りはBとCの箱になりますが、宝石入りのCは除外できません。
ですので司会者は100%、Bを除外する事になります。
Bが除外されて、AとCだけ残る
そうすると残るのは自分が選択したAの箱と宝石入りのCの箱です。
今回あなたは必ず箱を選びなおす事が前提ですから、Cの箱に変えて宝石をGETできる訳ですね。
・Cへ変更する(アタリ)
このケースなら宝石をもらう事ができます。
宝石をGETできる確率が3分の2に増える
ではもう一度「箱を選び直さない場合」と「箱を選び直す場合」の確率をおさらいしましょう。
後者は「外れの箱を除外する」行為と「選び直し」の行為の2つが発生します。
このような条件が付与される事で、確率が3分の1から3分の2に上昇しています。
箱を選び直さないパターン
最初から宝石の入った箱を選んだまま=確率3分の1
先述しましたが、この時司会者の除外行動の影響は受けません(してもしなくても一緒ですからね)。
箱を選び直すパターン
最初に宝石の入った箱を選んでいると、選び直しで宝石はGETできない
=確率3分の1
最初に宝石の入っていない箱1を選んでいると、選び直しで確実に宝石の箱をGETできる
=確率3分の1
+(プラス)
最初に宝石の入っていない箱2を選んでいると、選び直しで確実に宝石の箱をGETできる
=確率3分の1
※箱1・箱2は、宝石の入っていないハズレの箱2つを指しています。
確率が3分の2に上昇
もう少しわかりやすくパターン化してみると以下となりますね。
箱A〇・箱B×・箱C× → 箱Aから箱B(箱C)へ変更→ハズレ
箱A×・箱B〇・箱C× → 箱Aから箱Bへ変更→当たり
箱A×・箱B×・箱C〇 → 箱Aから箱Cへ変更→当たり
毎回ハズレ箱が除外される事で、当たり箱とハズレ箱が毎回1対1になっています。
このハズレ箱が除外される部分がまさに「確率変動」にあたります。
最初から宝石入りの箱を選んでいた1パターンの場合だけが外れ、最初から選んでいない2パターンの場合は必ず当たります。
選び直した方が確率が高い
箱を再び選ぶ場合、宝石の入った箱を選ぶ確率は「3分の1+3分の1」で合計3分の2になる事がわかります。
ここで選ばないのなら、宝石の入った箱を選ぶ確率は3分の1のまま(従来のまま)です。
つまり箱を選び直した方が宝石をGETしやすくなるのです。
母体数を大きくしてみましょう
今回は3つの箱でしたが、箱の数がもっと多くなればわかりやすくなります。
箱が1000個あったとして、その中に1個宝石入りがあったとします。
箱が1000個あった場合
1000個の箱から宝石入りの箱を一つ選ぶのであれば、確率は単純に千分の1ですよね。
あなたがまず箱を一つ選択し、残り999個のうち998個を司会者が除外するのです。
あなたはその時残った箱と元々選択した箱の二択、どちらを取るでしょうか。
残った箱が非常に魅力的に見える
司会者によって999個のうち998個の外れ箱が除外されるのですから、残された箱に選び直しをした方が圧倒的に良いように思いますよね。
実際にそうなのです。しかしこれが箱3つの場合はそう考えられないのが人間なのですね。
では先ほど紹介した「箱を選び直すパターン」と「箱を選び直さないパターン」とに照らし合わせて考えてみましょう。
箱を選び直さないパターン
最初から選択した箱を変更しない=千分の1
この時司会者に998個を除外されても、除外されなかったのだと思う事になります。
3個の時はそうでもなかったですが、非常にもったいない気がしますよね
箱を選び直すパターン
最初に宝石の入った箱を選んでいると、選び直しで宝石はGETできない
=千分の1
最初に宝石の入っていない箱1番を選んでいると、選び直しで確実に宝石の箱をGETできる=千分の1
+(プラス)
最初に宝石の入っていない箱2番を選んでいると、選び直しで確実に宝石の箱をGETできる=千分の1
+(プラス)
最初に宝石の入っていない箱3番を選んでいると、選び直しで確実に宝石の箱をGETできる=千分の1
+(プラス)
…
最初に宝石の入っていない箱999番を選んでいると、選び直しで確実に宝石の箱をGETできる=千分の1
※箱1番・箱2番・箱3番…「宝石の入った箱」以外の999個に番号を振っています。
千分の1と千分の999程ちがう
この様に、最初から宝石入りの箱を選んでいた1パターンの場合だけが外れ、最初から選んでいない999パターンの場合は必ず当たります。
つまり箱を選択し直す場合、宝石の入った箱を選ぶ確率は「千分の1+千分の1+…」が999ケース分合計され、千分の999になる事がわかります。
選択した箱から変えなかった場合、宝石の入った箱を選ぶ確率は千分の1のままです。
大きく確率が変動したのにそのチャンスを掴めなかった事になりますね。
除外を免れた箱の重み
このお話のキモは、どんなに母体数が多くてもそれが除外される事で当たりとハズレの箱が1対1になるところです。
母体となる数が多ければ多いほど、残りの箱からハズレの箱を全て除外するという行為は格段に確率を上げます。
最初から選択した箱と除外を免れた箱とでは、背負うものが全然違うのです。
当てれる確率が高いと迷う
取り除かれてしまうのが「ハズレの箱」である事は大きいですよね。
最初から当たりの箱を選択した場合だけ失敗する訳ですから、箱が1000個の場合にこのケースになる事はほぼ奇跡に近いです。
箱が1000個の例なら、感覚的に箱を選択し直した方が良いとわかりますよね。
ただそれが箱が3つだけで元から当てれる確率が高いと、人間を迷わせてしまうものなのです。
みなさんもこの様に途中から再選択できるようなシーンがあれば、チョイスし直してみた方が良いかも知れません。