クライアントエピソード2精神的に強くなろう
フリーランス体験談2
今では私が制作・担当していたサイトが閉鎖されたのでこの方とやり取りをする事はなくなっているのですが、とても感謝しているクライアントでしたのでここで少しだけ紹介します。
新規WEBサイト制作のお問い合わせ
もう10年以上前ですが、ホームページからのお問い合わせを受けました。そして地元の空港近くのレストランで初めてそのクライアントと面談する事になりました。
相手は10歳年上の方で、普通に人生の先輩という感じの普通の男性でした(所帯持ちでした)。その方の展開されている事業のホームページ制作依頼を受けます。
自身のレベルの低さ・甘さ
その当時はホームページを完成させるまでにかなりの時間を要していましたし、完成までの確実な納期も提示ができない状態でした。
ですので段階的に「この部分は大体1週間でお見せできます」という形で簡単なお約束をして、都度確認をしてもらう様にしていました。
その当時の私はまだまだ未熟で仕事ぶりにも「甘さ」があり、次のいわゆる「段階的な納期期日」が来たにも関わらず、きちんと連絡できずにいました。
クライアントからのメール
そして期限を過ぎた次の朝、クライアントからメールが届きました。
メールの内容は期限を過ぎた事による怒涛の長文苦情メールです。
その文面は非常に細かく様々な方向から多角的に非難がされており、細かいだけでなく、その打ち手が「まとうオーラ」が感じられる、鬼の様にすさまじい文言の羅列でした。
そのあまりの内容にメールを見て固まった事を覚えています。
形容しがたい圧力と怒り
もちろん指摘してあることに間違いはないのです。私が連絡をしていなかった事は確かなのですから。
ただ、怒鳴り方の表現として「それを選ぶか…?」という程の最上級の振り切り方がしてあり、とにかくメールの文面から漂う形容しがたい圧力と怒りの感情に包まれたことを覚えています。
今回私がクライアントにしてしまったミスを非難すると同時に、こちらの心と人格を徹底的に打ち砕いてくるまがまがしいオーラを持つ文面です。それは確実に私のメンタルを破壊しに来ていました。
相手の気持ちが乗ったメール
これは文面をもらった者にしかわからない感覚かも知れません。最初にもらったその苦情メールはもう保存していない為(保存したくなかったため)、自分の記憶を頼りにできるだけ詳細に説明しています。
ですので実際にその文面を見たら実はそれほどではないのかも知れないのですが、それが自分の記憶補正だったとしても、それ位のインパクトで「険」があり、ずーんと暗い気持ちにさせられる苦情メールでした。
メールの文面であっても手紙の様に「相手の気持ちが乗るんだ」とその時初めて感じた事を覚えています。
電話には出ない
そしてさらにやっかいなのが、すぐに電話をして謝ろうとしても電話には一切出てくれない事です。
何度電話しても出て頂けないので、お詫びのメールをとりあえず送ります。そうするとすぐに返信が来て、また怒りメールの続編が始まるのです。これが繰り返される状態に陥ります。
免疫のない私
とにかく耐性が無いその当時の私は落ち込みまくりました。
その時はなぜ電話には出ないのにメールだけ返信されるのかがわかりませんでしたが、結果、最後までわかりませんでした。
この怒号メールについてはもっともっと表現をしたいのですが、気持ちを切り替えて話を先に進めます。
何とかサイトは完成
とにかくその後は納期を守りつつ精神的なダメージをかばいながら、何とかサイトを完成させていきます。
サイトを完成させるまでそのように「怒られた」部分は数回あったと思います。苦情メール→謝りメール→苦情メール→謝りメールのループはしばらく続いたはずです。
あまりの出来事だったので怒られた回数はよく覚えていません。
サイトの完成後はちょっと落ち着いて、徐々に精神的ダメージから回復しつつある頃、そのクライアントから電話連絡を受けました。
面談して打ち合わせをしたい
それはもうドキドキ×2しました。どのように詫びを入れればよいか悩みましたし、とにかく誠心誠意謝るしかないと思い、決死の覚悟と緊張でその場に臨みました。
相手の反応は、笑顔で「いいよいいよ」の一言。
それほどあっけないお返事でした。終始優しくて全く怒ってなんかいませんでした。最初にレストランで面談した時と同じ普通の話しぶりなのです。
許してくれていた
よかった!許してくれていたんだと思いました。その時は心から安心してほっと胸をなでおろしたものです。
そのクライアントは「新しいお客さんもちょくちょく紹介するから」とさえ言ってくれました。よかった、本当によかった!
仕事はちゃんとしないといけない・約束はきちんと守らないといけない、お仕事の基本をこの件で学ばせてくれたのだと思いました。
実際にお客様もその後何度かにわたって紹介をしていただき、今でも紹介されたお客様とはホームページ管理などで関係が続いています。この件に関しては心から感謝しています。
精神的に強くなろう
…ところがここで予想外の展開が待っています。
その後数回にわたり、サイトの更新ややり取りで少しでも気に食わない事があると、初回と同レベルの「メンタルを砕く怒号メールと電話には出ませんよ攻撃」が始まるのでした。
その徹底的な攻撃態度は往年の宿敵に対して(悪人と言った方が良いのか)おこなうやり方そのものなのです。
自分の経験不足
これには正直困惑しました。2回目面談した時はあんなに優しかったじゃない?と。
その頃の私は「なぜこんな事をするのだろう」とは思っていましたが、「この人はこんな人なんだ」とは思いませんでした。単に経験不足ですね。
ダメな部分を指摘するにも「言い方」があるでしょう?そんなに怒らなくてもいいじゃない?は通用しない人でした。そこに理由は無いのです。
ただ耐えるだけ。それしかない。
メールで反論して激高されたら何をされるかわからない!その前に何が激高される引き金になるかもわからない、だからと言って無視はできない!…、ホントたまったもんじゃありません。
結果たどり着いた先は「とにかく、相手のメール内容に影響されずにとにかく謝る」次の展開を生まない様に「謝る」、それだけでした。
相手は変わらない、だからこちらが精神的に強くなるしかない、と我慢する事を覚えた最初のクライアントになります。
悪い人ではないのです。
と同時にその方は「毎回新鮮な怒号メールを送って電話には出ない人」ですが、「それ以外のことは何もしない人」であり、「仕事をきちんとすると紹介も時折してくれる人」でもありました。
もう一つ印象に残っているのが、2011年の東日本大震災があってしばらくして、そのクライアントから電話がかかってきた事です。
被災地からの電話
その頃には「電話が掛けてくる時はこの人は機嫌が良い」と、何となくわかってきていました。ドキドキはしますけど。なにせ最初の印象が強すぎますから。
東日本大震災で救援活動のため、被災地に来ているとの事でした。そこでの現状を目の前にして、「人生何が起こるか分からないね、好きな事をできる時にした方がいいね」と話されていました。
…この落差がすごいなと、改めて思いました。決して悪い人ではないんですね。
他も同じことを感じていた
その後しばらくしてそのクライアントは違う事業を始められようで、制作したサイトが閉鎖になったのは今から2年位前です。
閉鎖がされた後、クライアントが過去に紹介してくれた別のお客様と何度かこのクライアントの話になった事がありました。
同じような怒号メールをもらっていたとある会社の女性社員が、精神を病んで仕事を辞めたとか辞めていないとか…そんなお話を聞きました。
自分だけじゃなかったんだと、初めて知った瞬間でした。
この教訓が自分の財産に
私としては今思うだけでも背筋が凍る体験談ですが(他の人はどうかわかりませんが)、良かったところだけを見て判断をする様にしています。
アバウトでも相手と納期の約束を一旦交わしたら、それは必ず守る事。それが守れない場合は事前に必ず連絡をする事。このクライアントとのやり取りがあったからこそ、この事はしっかりと身についています。
このクライアントを超える人は今のところいないな、と感じるのはそれだけ自分がメンタル的に強くなったからかも知れません。
もちろんここまで長くやってこれたのはこのクライアントのお陰だと思っていますので、本当にとても感謝しています。