クライアントエピソード1警察に呼ばれる話
フリーランスとしての体験談
私はフリーランスで15年以上にわたり様々なホームページ制作案件を担当してきました。もちろん今現在もWEBサイト制作やSEO対策など全般的に幅広く請け負いしています。
15年もやっているといろいろな事に遭遇します。単にクライアントとのせめぎ合いというジャンルのお話だけではなく、相手側の立場・素性や人柄に触れる事も多くあり、やり取りを重ねるうちに結果として様々な経験をさせてもらっています。
今回はその中から印象に残っているお話を一つ。
もう10年以上前のお話です。その方は個人のクライアントでしたが、ホームページを作りたいという事でお電話でお問い合わせを頂き、サイト制作業務を請け負いました。
そのサイトは制作後しばらくして閉鎖となったのですが、その後程なくして先方より「次の案件」のお話を持ち掛けられます。
それが「アダルトDVDの通販サイト」という制作案件でした。
アダルト系案件は受けない
私はこのホームページ制作を仕事にした当初はそういったアダルト系のサイト制作も請負をしておりましたが、そのあとすぐにそういった案件は受けないように規定を設けて、受けない様にしていました。
先入観かも知れませんが、そういった業界は依頼されるクライアントがやはり「プレーンなクライアントではない」ケースがあり、接触の可能性を回避するため、どのような形の案件であってもそういったジャンルのご用命は受けない様にしています。
ですのでそう言ったお話が挙がれば、きちんと明確に規定のお話をしてお断りをしております。
結果、契約解除に
その時も規定で決めているという事でお断りをした結果、そのクライアントとはやり取りをする事はなくなりました。いわゆる契約解除という形です。
ここが重要ですがそのクライアントは人柄が非常に良く、支払いが滞ったりする事も当然ありませんでしたし、とてもフレンドリーな方でした。
何度か仕事以外のお話などもしてお茶を飲んだりしたことがあります。
もともと持病持ち
持病を抱えていらっしゃるという事もうかがっていたので、少しでもお手伝いができればいいなとは思っておりましたが、「取り決め上できない事はできない」ので、いたし方なくお付き合いは終了となりました。
当然その後音沙汰はありませんでしたが、その後しばらくして代わりに別の方から連絡がありました。
警察の方からです。
当然電話を受けた方としてはドキッとします。何故に私へ警察から電話があるのか、やましい事はしていないと思うからこそ、なおの事ドキドキします。
警察の担当者が言うには、その契約が切れたクライアントが逮捕されましたとの事。その罪状が「違法DVDの通販をおこなったから」との事でした。
クライアントが逮捕されていた
どうやらそのクライアントは私が通販サイト制作を断った後、別の業者を探してその者にサイトの制作を依頼したらしいのです。それが見つかって捕まったという事でした。
そんなに月日は経過していないのに、そんなにすぐに見つかるのか…という印象です。次に頼んだ業者が別件で警察にマークされていたのかも知れませんね。あくまで憶測ですが。
事情聴取の際に、クライアントは「その業者に頼む前に、前の業者(つまり私)に一度依頼したが断られた」という経緯を話したらしいのです。
事情聴取に来て欲しい
「それが本当の事かどうか確認を取りたいので連絡をさせて頂きました、署の方に来てもらえますか?」という担当者のお話でした。
おおよその主旨はわかりましたが、調書を取るために警察署の方に出向かなければならないとの事で、正直「マジか」と思いつつ、その警察署に出向いたことを覚えています。
不安ばかり
私自身は何も罪になる事はしていないのですが、初めて警察署内で聴取を受ける訳です。
「何を聞かれるのか」、そして「それを聞く事で本当は何を聞き出すつもりなのか」、などいろいろな事が巡って大変緊張しました。
仕事上の事を根掘り葉掘り聞かれるかも知れないとか、本当にフリーランスでやっていけてるのかとか、申告の事で何かまずい事があったのかとか、確かに過去に少しだけアダルト系(風俗系)のサイトを作っていたのがまずかったかもしれない、などなど。
一人で勝手に想像と心配を膨らませていました。
何事もなく聴取終了
結果的にはそのクライアントの事とのやり取りの経緯しか聞かれなかったので正直ほっと安心したのを覚えています。
そのクライアントは私に確認が来ている事自体をおそらく知らないのではないかと思います。でも私としては「とんでもない目に遭った」とは思っていません。
きっぱりと断った事が功を奏す
クライアントからは一度サイト制作のご用命を頂いていましたしお金も気前よく支払ってもらっていました。そして次の案件となる「違法DVD通販サイト」の件を私はしっかりと断っています。
私の取り決めているルールは正しかったし、売り上げに目がくらんでその通販サイトの制作依頼を受けなくて良かったという事が証明されたのです。
正直「あぶねぇ~」とは思いましたが(笑)。
クライアントの正直さに助けられる
その時に私が「ありがたい」とさえ感じた事は、クライアントが正直に話をしてくれた事です。
あくまで口頭による供述ですので、サイト制作の依頼があってそれを断ったという事実の流れが、メールなどに証拠として残っていた訳ではありません。
ですので罪を軽減するための言い訳をしようと思えば、多少捏造できる部分はあったと思います。自分を守りたいという感情はだれでも持ちますので。
クライアントとの関係性について
実際にどのような捏造が可能かどうかはすぐにイメージできませんが、とにかく「断られた」という部分は事実として、何もいじらずに警察に話をされています。
ここでポイントになるのはクライアントと私自身との関係性だと思います。その時点では付き合いはなくなっているのですが、どういう形で付き合いが終わっているのかが重要だとその時あらためて思いました。
もしそのクライアントと私との関係があまりよくなかったり、仮にこじれていたら、もしかしたら虚言に巻き込まれていた可能性もあったかも知れません。
どんな状況でも相手との関係はこじらせない
でも仮にそうなった場合、それはクライアントだけが悪い訳ではなく良好な関係を築く事ができなかったこちら側にも多少の責任があり、日頃のおこないが関係してくるのだと私は思います。
どんな状況でも相手との関係はこじらせずにしっかり踏ん張っておく事。これが重要だと肝に銘じた瞬間でした。
あの当時確かに警察署に調書を取られに行きはしましたが、いまでは貴重な経験をさせてもらったとさえ思っています(ここで話をしているくらいですから)。
今そのクライアントがどうされているのかはわかりませんが、今でも強烈な印象が残っているエピソードです。