クライアントエピソード10:社長、お世話になりました。
本記事は私個人に関する事ではありません。そのため内容を特定しうる全ての固有名詞・名称などを避けています。
本記事掲載に伴い登場している人物を誹謗中傷・避難する意図は全くございませんので、どうぞご了承下さいませ。
クライアントエピソード10:社長との突然の別れ
前回の記事で、私がフリーランスとして初めてWEBサイト制作のお仕事をもらった会社の社長さんを紹介しました。
今思えば、その後の私の将来を決めるとても重要な出会いであり、仕事を始めるきっかけとなった大切な方でした。
WEB業界に引き込んでくれた方
なぜなら私はその時まで、フリーランスとしてこのWEBの業界で生きていくことなんか、考えもしていなかったからです。
今日の私がいるのはその社長のお陰と言っても過言ではありません。
そんな社長が今から随分前になりますが、突然亡くなってしまいました。
社長がいなくなる
その事を知らされたのは会社の社員である彼女からでした。
聴いた時は本当に寝耳に水でしたね。まさに「は!?」という感じです。
最初は彼女から「社長がいなくなった」という風に聞きましたが、程なくして私は「もう社長には会えないかも」と思います。
ではなぜ社長がいなくなった事が、すぐに「社長が死んでいるかも知れない」になったのか。
それは社長が遺した「遺書」を彼女が最初に見つけたからなのです。
ドラマでよくある「あなたがこの手紙を…」
よくドラマでありますよね。
「この手紙をあなたが見ている頃には私はもうこの世にはいないでしょう…」というくだりです。
本当にそのような内容の手紙が社長室に置いてあったのを、彼女がたまたま見つけたのです。
当然の事ながらその内容を本気にするまでに、彼女も少し時間が掛かります。
でももしそれが本当だとしたら…と考えた時、思い当たる節が彼女にはありました。
生前の行動に思い当たる節
少し前に社長は、「俺が死んだらいくら(生命保険が)入るのかな」と確認していたらしいのですね。
何故そんな物騒なことを聞くのか、彼女は不思議に思っていたそうです。
それ以外にも今思えば不振な行動がいくつかあった様でした。
知らなかった事実
社長が手紙を残していなくなった事と手紙の内容から、経理担当である彼女も知らなかった事実が発覚します。
彼女から見た「社長」は、前々からお金の使い道がわからない面がありました。
なので、どこにそのお金を持っていっているのかいつも心配していたのです。でもそれは教えてくれない訳です。
となると経理処理する側も大変ですよね。つじつまを合わせなければならないからですね。
ギャンブルで多額の借金
後からわかったのは、そのお金をギャンブルに使っていた事。
それも競馬とかパチンコではなく、もっと「ダークなレベルのギャンブル」であり、とてつもなく大きな借金があった事です。
それでいわゆる「首が回らなくなった」のですね。
奥様は全てわかっておられた
社長を捜索するにあたって、社員たちは警察からの指示を受けつつ、社長が行きそうな箇所に「あたり」を付けます。
当然社長の奥様にも連絡をして共に探す事になります。
ここで違和感を感じたのが、社員たちが想定する捜索場所と奥様が想定する場所におおきな「隔たり」があった事です。
長い付き合いのある社員たちがこの辺にいるのではないかと思う場所(実家付近)の提案に対し、「いや絶対その付近にはいないはず」と、奥様と大きく意見が分かれるのです。
奥さんの意見優先で捜索
当然奥様には逆らえませんから、まずは奥様の言う場所から捜索が始まります。
後から思えば、奥様はその時点で全てわかっていたのだと思います。
ですので時間経過をみると「確実に死んでいてもらうためには、もう少し時間を稼がないといけない」という考えが走ったのでしょう。
ですのですぐに場所を特定されないように手助けをした、という言い方が正しいでしょうか(あくまで憶測です)。
会社はどうなるのか、それだけが心配
結果、時間が掛かってしまいましたが社員の想定した付近で社長を発見します。
社長の亡き後、会社はどうなってしまうのか。
当然の事ながら次に会社の実質的な経営権利を持つのは「奥様」になります。
不安、ただ不安
社員とは決して折り合いが良いとは言えない関係だったらしいので、社員はとても心配をしました。
これからどうなってしまうのだろうと。
社長には申し訳ないのですが、亡くなった事よりもこれからどうなるのかが先に懸念されるのです。
盛大な葬儀が行われる
大きな葬儀会場で葬儀がおこなわれました。
たくさんの参列者に囲まれた壮大な葬儀でした。私も参加して「ありがとうございました」と挨拶をさせてもらいました。
涙のため、言葉を噛みながら社長に伝えた事を今でも覚えています。
違う人種の人たちも
参列者の中には、先述したダークなレベルの「ギャンブル担当者」の人も来ていました。「ご挨拶」に来ている訳ですね。
会社の社員たちは大きな借金があったという事実と、今後の会社の行方に対する不安に押しつぶされそうになりながら参列しています。
それに対して奥様は終始落ち着いて、亡き社長を偲んでおられる感じです。
この温度差を肌で感じていた私は、この時の状況をどう表現して良いかわかりません。
奥様とのせめぎ合い
一刻も早くこの状況を打破したい会社の社員側と、ゆっくりと腰を落ち着けて事を進めたい奥様との間で、特に口論がある訳ではないのですが、せめぎ合いが生じます。
彼女もこの時経理上(決済の関係上)いろいろ焦る事もあったらしいので、この何日間かの記憶があまり鮮明ではないそうです。
弁護士がつく
奥様はその後すぐに弁護士を雇い、表には出てこなくなりました。
会社の社員達だけでなく、ダークなギャンブル担当者の件もありますからね。
まず、その時点で会社が取引業者に対して払わなければならない代金は、その弁護士を通して払う・払われないが一方的に決まりました。
私はその奥様の計らいがあったのか、金額は少なかったのですが全額支払ってもらいました。
その頃社員側は、労働基準法に基づく残業代未払い分の請求を弁護士に対して申請しています。
いわゆる「徹底抗戦」をする形になったのですね。
これについてはタイムカードのコピーを取っていたので無事に支払われました。
会社の権利を放棄した理由
余談ですが、元々社長が経営していた会社は「本社」が別にあり、その「販社」として法人運営されていました。
奥様が引き続きその販社として経営を続ける事になれば、今の社員は奥様の下で働く事になります。
ですが結果としてそうはなりませんでした。話によると本社からの提案があったそうです。
会社は廃業して、再スタート
奥様の会社としては一旦廃業し、その後新たに社員だけで再起業をする形でスタートするという内容です。
※その際社員のリーダーだった人が社長になってのスタートです
それを思いのほかすんなり奥様は受け入れています。
なぜ奥様は簡単に同意をしたのか。
これもしばらくしてからわかりました。
本社の社長に対して、亡くなった社長と奥様は「多額のお金を借りていた」という事でした。
なので帳消しにする条件でその案を受け入れたのでしょう。
会社解体・再起業
一度会社は解体されましたが、その後何か月か個人営業をし、その後法人化されて今に至ります。
それから数年、当時の社員メンバーはそのまま、経理も彼女が引き続き担当し、私も業者として引き続きお付き合いをさせてもらっています。
奥様とはその後は接点がないのでよくはわかりませんが、かなりの額の保険金だったはずので切り抜けておられると思います。
ダークな担当者からの取り立てを最初は心配しましたが、結果として会社に来ることはありませんでしたね。
奥さまのところには来たかもしれませんがそのあたりは本当にわからないくらい、奥様とは関係が切れています。
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終わりに
今回の件で一番感じたのは、人間いつどうなるかわからないという事ですね。
売上も安定していて安泰だと思っていた会社だって、突如今回のような事になる訳です。
そしてもう一つ、「人」って表面だけではわからない、常にほんの一面しか見せていないという事ですよね。
あの社長にそんな裏の面があったなんて全く思いもしませんでした。
私にとって社長は社長です
ですが、私にWEBサイト制作を依頼してくれた社長である事も事実です。私は今もずっと恩義を感じています。
ですのでこの再スタートした会社にこれからも貢献をし続ける事が一番の恩返しだと思っています。
社長に会えなくなったのは大変残念ですが、この件は私の忘れられない経験の一つになっています。